この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
「私がですか?」
「そうだ。それにしても君、男のくせして随分と可愛らしい顔をしているんだね」
なかなか立ち上がらないと思っていたのに、急にフラフラとこちらへ近づいてくる。その不安定な動きと、だんだんとはっきりしてくるアルコールの匂いで私は気づく。この男はひどく酔っている。
重い障子を力づくで滑らそうとするが、思いのほか硬く閉められていて、逃げ足を食い止められてしまう。
その男は頬をやたら私の身体にスリスリと擦りつけてきて、あまりの不快感に身の毛がよだつ。
こんな時だって考えてしまうのは東条のことだ。そもそも私の真の目的は宗高ではない。そのずっと奥にいる、東条太郎だ。ここで宗高に消えられてしまっては、手札がすべてなくなってしまう。私は角が立つことを恐れて、抵抗せずにひたすら耐え忍ぶ。
それを良いことに、男の要求はますますヒートアップしていく。
「いっぱい可愛がってあげるからさ。代わりに頼みを聞いてくれないかね?」
こんなリスクすら一人で対処できないで、何がリスク管理だ。私は自分の無力さを痛感し、かろうじて握りしめていた取っ手から手を離そうとする。
そのときピクリともしなかった障子が嘘のように動いて、密閉されていたはずのこの部屋に清々しい風が入ってくる。
逃げるように障子に背中を預けていたのに、なぜか私は後ろに倒れることはなかった。背中からは先ほどまでの無機質なものとは違う、安心感すら感じるほどの温かみをじんわりと感じる。
「何を、している?」
威圧感をもあるその声に驚いて、私は支えを突っぱねようとする。でも肩にずしりと重たい手のひらがのしかかってきて、その場から動くことは許されない。
もう何も見なくたってわかる。嫌でも耳に残って離れない怒りが混じったその声と肩にのしかかる手の重さから、いま私の後ろにいるのは社長なのだと、すぐにわかった。
「どういうことですか?これは」
今となっては懐かしさすらある丁寧な言葉遣いに、彼との間にできた深い溝を思い知らされる。また彼を失望させてしまった。不快感で埋め尽くされていたはずの頭の中が、一気に情けなさでいっぱいになる。
でもこんなに密着した距離にいるのに、彼の息遣いは不思議と直接感じられない。何故だろうと気になって振り返ると、そこにあった表情は怖いほどに色のないものだった。そしてずっと足元で懺悔する北里社長に向かって、静かな怒りをぶつけている。
「少し酔っていたんだ」
「酔っていた?そんな言葉で済まされることですか?」
「頼む、この通りだ。許してくれ」
「今さら何を言っても無駄ですよ。あなたが犯した罪は、どうしたってこの子に残るわけですから」
ただ重くのしかかっていただけの真っ直ぐに伸びた指が、私の肩に深く沈み込んできて、驚きのあまり肩が跳ね上がる。
「そうだ。それにしても君、男のくせして随分と可愛らしい顔をしているんだね」
なかなか立ち上がらないと思っていたのに、急にフラフラとこちらへ近づいてくる。その不安定な動きと、だんだんとはっきりしてくるアルコールの匂いで私は気づく。この男はひどく酔っている。
重い障子を力づくで滑らそうとするが、思いのほか硬く閉められていて、逃げ足を食い止められてしまう。
その男は頬をやたら私の身体にスリスリと擦りつけてきて、あまりの不快感に身の毛がよだつ。
こんな時だって考えてしまうのは東条のことだ。そもそも私の真の目的は宗高ではない。そのずっと奥にいる、東条太郎だ。ここで宗高に消えられてしまっては、手札がすべてなくなってしまう。私は角が立つことを恐れて、抵抗せずにひたすら耐え忍ぶ。
それを良いことに、男の要求はますますヒートアップしていく。
「いっぱい可愛がってあげるからさ。代わりに頼みを聞いてくれないかね?」
こんなリスクすら一人で対処できないで、何がリスク管理だ。私は自分の無力さを痛感し、かろうじて握りしめていた取っ手から手を離そうとする。
そのときピクリともしなかった障子が嘘のように動いて、密閉されていたはずのこの部屋に清々しい風が入ってくる。
逃げるように障子に背中を預けていたのに、なぜか私は後ろに倒れることはなかった。背中からは先ほどまでの無機質なものとは違う、安心感すら感じるほどの温かみをじんわりと感じる。
「何を、している?」
威圧感をもあるその声に驚いて、私は支えを突っぱねようとする。でも肩にずしりと重たい手のひらがのしかかってきて、その場から動くことは許されない。
もう何も見なくたってわかる。嫌でも耳に残って離れない怒りが混じったその声と肩にのしかかる手の重さから、いま私の後ろにいるのは社長なのだと、すぐにわかった。
「どういうことですか?これは」
今となっては懐かしさすらある丁寧な言葉遣いに、彼との間にできた深い溝を思い知らされる。また彼を失望させてしまった。不快感で埋め尽くされていたはずの頭の中が、一気に情けなさでいっぱいになる。
でもこんなに密着した距離にいるのに、彼の息遣いは不思議と直接感じられない。何故だろうと気になって振り返ると、そこにあった表情は怖いほどに色のないものだった。そしてずっと足元で懺悔する北里社長に向かって、静かな怒りをぶつけている。
「少し酔っていたんだ」
「酔っていた?そんな言葉で済まされることですか?」
「頼む、この通りだ。許してくれ」
「今さら何を言っても無駄ですよ。あなたが犯した罪は、どうしたってこの子に残るわけですから」
ただ重くのしかかっていただけの真っ直ぐに伸びた指が、私の肩に深く沈み込んできて、驚きのあまり肩が跳ね上がる。