この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
彼は私が泣いているとでも思ったのだろうか。あの凍りついた表情をしていた人と同じとは思えないくらいに優しく気遣ってくる。
「ここはもう良いから。早く帰ろう」
私の手首は抵抗も許されないくらいに固くギュッと握りしめられていて、その引っ張る力に耐え得れなくて足元が掬われそうになる。もう怒りで自分自身の力をコントロールさえできなくなっているのだろうか。
でも北里社長のこの一言に関しては例外だった。
「お父様は?」
「…はい?」
「お父様に逆らって、よろしいんですか?」
彼はどう答えるのだろう。恐らく父親の話を出されたら、彼だって好き勝手するわけにはいかない。やはりここは私から引き下がるしか…。
「……ああ、好きにしろよ」
耳を疑う言葉に固まってしまった私は、彼の力によって辛うじて止まることなく動けている。
「社長、あんなこと言って良いんですか?」
「人の心配をしている場合か?ったく…ほんとに」
いつも通りの口調に戻っていて、少し嬉しくなる。嬉しくなる……?これは何に対する嬉しさだろう?………そうだ。見切りをつけられなくて良かった、だ。
一瞬、自分で自分の感情がわからなくなってしまう。そうだ、これだけ衝撃的なことが起きたのだから、パニックになるのも当然だ。彼の中でもあの出来事が薄れているのだろうか。昨日のことがまるでなかったように、私はもはや親しみすら感じるセダン車の後部座席へと誘導される。
でもなぜかいつもとは違って、運転席にいるはずの人影が見えない。私のそばから離れていこうとする彼にその違和感をぶつける。
「ちょっと待ってください!運転はどなたが?」
「ん??僕以外いないだろ」
彼に運転なんてできるのだろうか。
運転する姿は初めて見たが、右手を軽く添えて手慣れたようにハンドルをさばく姿に、安心して体を預けることができる。
でもオフィスとは反対方向にハンドルを切ろうとするから、私も慌てて声を上げる。
「社長!道、間違えてませんか?」
「いや、合ってるよ。僕の家に向かっているんだから」
「えっ?社長の…?」
「それか、僕が君の家に行こうか?」
彼の家も困るが、私の家なんてもっと困る。
「本当に大丈夫ですから!」
「君の大丈夫は信用できない」
……《《信用》》。
その言葉に昨日の過ちが思い起こされ、それ以上何も言い返すことができなくなる。信用できない。いくらそうはっきり言われたって、対抗心が湧くならまだしも、落ち込む必要なんてないはずなのに。
今はなぜか胸がズキンと痛むのがわかる。身体がそう強く反応して、知らない間に芽生え始めていた自分では止められないこの気持ちの正体に気づく。
いや気づいていたが、必死に言い訳を探して気づいていないフリをしていただけかもしれない。でも、今も続くこの胸の痛みが何よりの証拠だ。
彼の家に行くのが怖い。とにかく自分が自分でなくなりそうで怖い。だって、これは絶対に犯してはならないリスクだから。
良かった。今日は彼が隣に座っていなくて。このはっきりとした変化が分からぬほどに真っ暗な夜で。
今、停めて!と叫んだら彼は何と言うだろうか。きっと昨夜みたいにじりじりと理由を問いただしてくるんだろう。私が偽りのない真実を洗いざらいはき切るまで……。その光景が鮮明に想像できるから、たった一言も喉元で詰まって上手く出てこない。
そのうちに視界が一気に明るくなり、目を薄らと開けると、眩しいくらいに強い輝きを放つ高級車たちが綺麗に整列している。それもそうだ。彼ぐらいの地位があれば限られた人しか住むことができないタワーマンションでの生活だって、簡単に手に入れることができるのだから。
自分との差をまじまじと見せつけられたようで、まるで魔法が解けたように何だか全てが馬鹿馬鹿しくなる。
「ここはもう良いから。早く帰ろう」
私の手首は抵抗も許されないくらいに固くギュッと握りしめられていて、その引っ張る力に耐え得れなくて足元が掬われそうになる。もう怒りで自分自身の力をコントロールさえできなくなっているのだろうか。
でも北里社長のこの一言に関しては例外だった。
「お父様は?」
「…はい?」
「お父様に逆らって、よろしいんですか?」
彼はどう答えるのだろう。恐らく父親の話を出されたら、彼だって好き勝手するわけにはいかない。やはりここは私から引き下がるしか…。
「……ああ、好きにしろよ」
耳を疑う言葉に固まってしまった私は、彼の力によって辛うじて止まることなく動けている。
「社長、あんなこと言って良いんですか?」
「人の心配をしている場合か?ったく…ほんとに」
いつも通りの口調に戻っていて、少し嬉しくなる。嬉しくなる……?これは何に対する嬉しさだろう?………そうだ。見切りをつけられなくて良かった、だ。
一瞬、自分で自分の感情がわからなくなってしまう。そうだ、これだけ衝撃的なことが起きたのだから、パニックになるのも当然だ。彼の中でもあの出来事が薄れているのだろうか。昨日のことがまるでなかったように、私はもはや親しみすら感じるセダン車の後部座席へと誘導される。
でもなぜかいつもとは違って、運転席にいるはずの人影が見えない。私のそばから離れていこうとする彼にその違和感をぶつける。
「ちょっと待ってください!運転はどなたが?」
「ん??僕以外いないだろ」
彼に運転なんてできるのだろうか。
運転する姿は初めて見たが、右手を軽く添えて手慣れたようにハンドルをさばく姿に、安心して体を預けることができる。
でもオフィスとは反対方向にハンドルを切ろうとするから、私も慌てて声を上げる。
「社長!道、間違えてませんか?」
「いや、合ってるよ。僕の家に向かっているんだから」
「えっ?社長の…?」
「それか、僕が君の家に行こうか?」
彼の家も困るが、私の家なんてもっと困る。
「本当に大丈夫ですから!」
「君の大丈夫は信用できない」
……《《信用》》。
その言葉に昨日の過ちが思い起こされ、それ以上何も言い返すことができなくなる。信用できない。いくらそうはっきり言われたって、対抗心が湧くならまだしも、落ち込む必要なんてないはずなのに。
今はなぜか胸がズキンと痛むのがわかる。身体がそう強く反応して、知らない間に芽生え始めていた自分では止められないこの気持ちの正体に気づく。
いや気づいていたが、必死に言い訳を探して気づいていないフリをしていただけかもしれない。でも、今も続くこの胸の痛みが何よりの証拠だ。
彼の家に行くのが怖い。とにかく自分が自分でなくなりそうで怖い。だって、これは絶対に犯してはならないリスクだから。
良かった。今日は彼が隣に座っていなくて。このはっきりとした変化が分からぬほどに真っ暗な夜で。
今、停めて!と叫んだら彼は何と言うだろうか。きっと昨夜みたいにじりじりと理由を問いただしてくるんだろう。私が偽りのない真実を洗いざらいはき切るまで……。その光景が鮮明に想像できるから、たった一言も喉元で詰まって上手く出てこない。
そのうちに視界が一気に明るくなり、目を薄らと開けると、眩しいくらいに強い輝きを放つ高級車たちが綺麗に整列している。それもそうだ。彼ぐらいの地位があれば限られた人しか住むことができないタワーマンションでの生活だって、簡単に手に入れることができるのだから。
自分との差をまじまじと見せつけられたようで、まるで魔法が解けたように何だか全てが馬鹿馬鹿しくなる。