この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
声も出せなかった。手も出せなかった。
だから、彼は、受付台に私の名刺を置く。
もう、止まらない。また、歩き出す。
私は、しゃがみこんだまま、動けない。
ざわざわと声がする。
ハッとする。
辺りをキョロキョロと見回す。
みんなが見ている。
みんなが噂している。
私は、立ち上がった。
とにかく、歩き出した。
とにかく、角を曲がった。
ちょうど、エレベーターがあった。会場となるのは最上階の一つ下、19階にある大ホール。
ああ、あの人は、ああいうやり方で、火のないところに煙を立たせてきたのだろうか。過去のお相手たちに同情しながら、開閉ボタンを押す。
誰もいない。
だから、隅に乗る。
でも、すぐに、腕章をつけた人々が、私も私もと、乗り込んでくる。もう、人の頭しか見えない。
お手柔らかに……なんて。
ここに集まっている記者たちが、みんな敵だと理解していれば、絶対に言えない言葉だ。
まあ、仕方がない。東条宗高は、絵に描いたような温室育ちのおぼっちゃまだから。
東条グループは東条商事に東条銀行、それに数十店舗の飲食店や衣料品店まで抱える。
そんな大帝国を築き上げた前社長の息子として育ち、御曹司たちがこぞって通う名門校をエスカレーターで卒業。
当たり前のようにグループで役員を任され、今や父に変わってグループを取り仕切る若き新社長。
ただ、私からすれば、これほど利用できる人間なんて他にはいない。
彼の余裕めいた一言が、私の中で積もり積もった執念に、ますます火をつけた。
乗客たちと暑苦しいくらいに、身体を隣合わせているからか。はたまた、そんな期待感から来るものなのか。
「二十年ぶり」と言われた今日が、どんな日か忘れてしまうくらいに、握りしめられた手のひらには、じっとりと汗が滲んでいた。
「チーン」
人々が、外に向かって流れ出す。
ようやく、自由になる。
だから、私も外に出た。
ただ、前を歩く人に、ついていった。
そこには、パイプ椅子が、いくつも並んでいた。
ほとんどの席が埋まっていた。
もちろん私の席はない。
この会見は、大手メディアにしか知らされていないもの。尚美の助けがなければ、こんなフリーの記者が、来れるはずもなかった。
だから、入り口のすぐそばに、自分の立つ場所を確保する。
すると、一人の記者が、振り返る。
何であなたが?というような、視線を浴びせてくる。
でも、私は相手にしない。
身体よりも大きなカバンの中から、メモを取り出す。ひたすらに睨み合う。
雇われ記者たちの後ろには大きな組織がある。
いくら言いたいことがあっても、お偉いさんの顔がチラつくと、喉元で止まってしまうのは仕方がない。
ここにいる全員に共通する目的は、ただ交際の真偽を確かめること。
私は、はっきり言って、そんなことには微塵も興味がない。
この中で、言いたいことをそのままぶつけることができるのは、何も失うものがない私くらいだろう。
だから、彼は、受付台に私の名刺を置く。
もう、止まらない。また、歩き出す。
私は、しゃがみこんだまま、動けない。
ざわざわと声がする。
ハッとする。
辺りをキョロキョロと見回す。
みんなが見ている。
みんなが噂している。
私は、立ち上がった。
とにかく、歩き出した。
とにかく、角を曲がった。
ちょうど、エレベーターがあった。会場となるのは最上階の一つ下、19階にある大ホール。
ああ、あの人は、ああいうやり方で、火のないところに煙を立たせてきたのだろうか。過去のお相手たちに同情しながら、開閉ボタンを押す。
誰もいない。
だから、隅に乗る。
でも、すぐに、腕章をつけた人々が、私も私もと、乗り込んでくる。もう、人の頭しか見えない。
お手柔らかに……なんて。
ここに集まっている記者たちが、みんな敵だと理解していれば、絶対に言えない言葉だ。
まあ、仕方がない。東条宗高は、絵に描いたような温室育ちのおぼっちゃまだから。
東条グループは東条商事に東条銀行、それに数十店舗の飲食店や衣料品店まで抱える。
そんな大帝国を築き上げた前社長の息子として育ち、御曹司たちがこぞって通う名門校をエスカレーターで卒業。
当たり前のようにグループで役員を任され、今や父に変わってグループを取り仕切る若き新社長。
ただ、私からすれば、これほど利用できる人間なんて他にはいない。
彼の余裕めいた一言が、私の中で積もり積もった執念に、ますます火をつけた。
乗客たちと暑苦しいくらいに、身体を隣合わせているからか。はたまた、そんな期待感から来るものなのか。
「二十年ぶり」と言われた今日が、どんな日か忘れてしまうくらいに、握りしめられた手のひらには、じっとりと汗が滲んでいた。
「チーン」
人々が、外に向かって流れ出す。
ようやく、自由になる。
だから、私も外に出た。
ただ、前を歩く人に、ついていった。
そこには、パイプ椅子が、いくつも並んでいた。
ほとんどの席が埋まっていた。
もちろん私の席はない。
この会見は、大手メディアにしか知らされていないもの。尚美の助けがなければ、こんなフリーの記者が、来れるはずもなかった。
だから、入り口のすぐそばに、自分の立つ場所を確保する。
すると、一人の記者が、振り返る。
何であなたが?というような、視線を浴びせてくる。
でも、私は相手にしない。
身体よりも大きなカバンの中から、メモを取り出す。ひたすらに睨み合う。
雇われ記者たちの後ろには大きな組織がある。
いくら言いたいことがあっても、お偉いさんの顔がチラつくと、喉元で止まってしまうのは仕方がない。
ここにいる全員に共通する目的は、ただ交際の真偽を確かめること。
私は、はっきり言って、そんなことには微塵も興味がない。
この中で、言いたいことをそのままぶつけることができるのは、何も失うものがない私くらいだろう。