この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
「いつからお付き合いされているんですか?」
「結婚のご予定は?」

案の定、もはや交際を前提とした質問が次々に飛び交う。

宗高はそんなお門違いな質問に対しても、すべてお見通しだと言わんばかりに

「交際は事実ではありません」

とキッパリ断言し、記者たちはそれ以上何も言えなくなってしまう。

一転して静寂が漂う中、空気と化していた私は今がチャンスだと動き出す。

「はい、そちらの方どうぞ」

「交際の噂が事実でないというのはよく分かりました。ではそもそもの疑問として、なぜ今日会見を開かれたのでしょうか?」

「なぜ、とは?」

今までとは角度の違う質問に、宗高の凛々しい眉がピクリと動く。

「実際のところ社長の女性関係について報じられるのはこれが初めてではない。しかし、これまで会見なんて一度も行ってませんよね?」

「今日会見を開いたのは、僕だけでなく彼女の尊厳を守るためでもあります」

「尊厳、ですか。では、これまで報道されてきた女性たちの尊厳は守られなくても良かった、と?」

「…そうではありません」

今日の会見で、彼は初めて言葉に詰まる様子を見せた。私はその一瞬を見逃さなかった。やはり今日の会見が開かれた理由は、別のところにある。その漠然とした直感が確信に変わった瞬間だった。

交際そのものを全否定され、用意していた質問が記者たちの手元からなくなったのか、あれほど賑やかだった場内には長く沈黙が続いている。

これは宗高を一騎打ちで追い詰められる絶好のチャンス。ただ、この会見に裏があるという確たる証拠が今の私にはない。

「他に質問がないようですので、今日の会見は終了いたします」

我々にこれ以上口を挟む隙を与えないように、宗高はあっという間に壇上から降り、私たちの手の届かない暗闇へと吸い込まれていってしまった。
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