この夜の意味〜声にできない恋を隠したら、完全無欠な御曹司の本気スイッチ入りました〜(旧:RISKY〜不敵な御曹司との恋は避けるべき〜)
気になる存在〜side宗高〜
身体に溜まった熱気が、足を進めるごとにスッと引けていく。それでもずっと気は張り詰めていて、顔の肉はこわばったままだ。

「社長!上出来ですよ」

そう言って後ろから駆け寄ってきた男は、大仕事をやり遂げた達成感から清々しい表情をしている。

「本当にこれで根も葉もない噂が飛び交うことはなくなるんだろうか」

「今はとにかく、出来ることは何でもやってみないと」

こういう本音を漏らせるのは、彼ぐらいしかいない。やっぱり僕だって慣れないことをするには、かなりの労力を使うし、不安も尽きない。でも小さいことかもしれないが、この行動が何かが変わるきっかけになってくれると僕は信じている。

「そうだな。だが、あの記者だけは、考えがあってこの会見を開いたことに、気づいていたみたいだ」

そう、今日僕は見つけた。世に出ている情報だけを、表向きの言葉だけを、あたかも真実のように決めつける。この世界にはそんな人間しかいないと、彼女を見つけるまでは本気でそう思っていた。

「あの記者とは、先ほど名刺を落とされた方でしょうか?見たところ、どこにも所属していない者のようでしたし、そんな力があるようには見えませんでしたが」

「あれは確かに気づかれていた。深く突っ込まれなかったから良かったものの、どう切り抜けようかと内心ヒヤヒヤしたよ」

ヒヤヒヤした。そして、正直嬉しかった。でも、そんなおかしな言葉は自分の胸の中だけにしまっておく。

「まあ、ひとまず会見は何ごともなく終わったんですから。社長、昼食まだでしょう?何か買って来ましょうか?」

「いや、一つの部屋にあれだけの人が集まっていたんだ。息抜きがてらに下で買ってくるよ」

「では、私はこれで失礼します」

「ああ、今日はありがとう。おつかれ様」

もしまた彼女に会えたら、次は同じ目線で向き合えるだろうか。
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