雨宮さん家の大型犬〜飼い主は最愛のわんこを何時でも愛でていたい〜


どうせ教室に戻ったって、あの子がしーちゃんのことを、追い掛け回していて、それをしーちゃんは面倒くさそうにはしてても、『幼馴染』なんてカテゴリーに縛られて、無下に出来てないだろうから。

さっと荷物だけ持って姿を消してしまおうと思った。
まぁ…しーちゃんとは、家で二人きりになれるし、と、そう思って。

だけど。
しーちゃんが家に帰って来たのは夜遅くて、コトコトとシチューを煮込みながら、メッセージアプリに、何回か連絡をしてみたのに、それにもレスポンスはなくて。

これって、大体何回目の事だろ?
なんて、何処か冷めた気持ちが過る。
スンとした顔をして、ぐるぐるとお鍋のかき混ぜる。

毎回、毎回。

私だけ、こんな思いをしなきゃなんないのかな。


寂しい。
苦しい。

切なくて、悲しい…。



あぁ…っ。
ほんっとに、ネガティブな方向に思考が行くと、流石の私も心が荒む。

出来上がったシチューを食べる気もなくなって、私はかちゃん、と蓋をしてから口元を人差し指で、とんとん、と叩いた。


ねぇ?しーちゃん?
今、何してるの?
早くしないと、潰れちゃいそうだよ。
しーちゃんの腕の中だけで、いっそ生きていたい…。

そんなことを思ってスマホを開くけど、メッセージには既読は付かないまま。

「はぁー…なんかもう…しんどい」
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