家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
 後ろを振り返る事なくひたすら逃げ続けるエリスだけど、道が悪いせいか肌は草木に当たり傷だらけ。

 靴を履いていないエリスの足も、これ以上歩けそうに無いくらい傷を負っていた。

 それと共に、木々の間から差し込んでくる陽射しは勿論、徐々に上がっていく気温からも体力を奪われていく。

 そして、

(……もう、駄目……足が痛い……疲れた、喉、乾いた……)

 昨晩からほぼ飲まず食わず状態で逃げ続けて来たエリスはとうとう力尽き、その場にしゃがみ込んだまま動く事が出来なくなってしまった。

(……きっと、ここで死ぬのね……。どうして私は、こんな目に遭わなきゃいけないの……)

 悔しさ、悲しみ、色々な感情がエリスの中に押し寄せる。

 シューベルトとリリナの会話から、殺されるかもしれない事は想像がついていた。

 だったら、聞いた時点で必要な物を持って逃げるべきだったと、自身の判断の遅さを恨みすらした。

 しかし、今更後悔したところで状況が変わる訳では無い。

(お父様、お母様……私ももう、二人が居る場所へ行きます……)

 しゃがみこんでから暫くして、意識が朦朧としてきたエリスは亡き両親に思いを馳せながらその場に倒れ込むと、そのまま意識を手放した。


「……おい、…………大丈夫か?」

 暗闇の中、エリスの耳に誰かが自分に呼び掛けてくれる声が聞こえてくる。

(……誰?)

 そして、身体がふわりと宙に浮くような感覚に重く閉ざされていた瞼を少しずつ開く。

「生きていたか。おい、大丈夫か? 何があった?」

 目の前には見知らぬ男の人の顔があり、ゆっくり瞳を開いたエリスの顔を心配そうに覗き込んでいた。
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