家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
 男を見た瞬間、未だはっきりしていなかったエリス意識が一気に覚めると共に、目の前にある彼の顔に驚き言葉を失った。

 彼の顔には、額から右のこめかみ、右頬に大きな切り傷があったから。

 そんな男を前にしつつも、ひとまず聞かれた事に答えたいエリスだけど、喉が渇いているせいで思うように声が出せず、掠れていて相手の男も上手く聞き取れない。

「ん? 何だ?」
「……っ、み…………ず…………、を、……」
「水? ああ、喉が渇いてるのか。少し待ってろ」

 エリスの身体を抱き上げ、どこかへ運んでいる途中の男は、彼女が『水』と口にしたのを聞き取ると、その場で一旦足を止めてしゃがみ込む。

 そして大木に寄りかからせるようにエリスを座らせると、自身が持っていた水筒を取り出して水を欲していた彼女に差し出した。

「ほら、飲め」
「…………っ」

 それを受け取ろうと手を動かしたエリスだけど、力が無いのか腕を上げる事すら出来ない。

 それに気づいた男は水筒の蓋を開けるとエリスの身体を支えるように腕を添えながら、少しずつ水を飲ませていく。

 とにかく喉が渇いていたエリスは流し込まれた水を飲み込んでいくと徐々に乾きは潤され、飲み口を離されてから少しして、

「…………あ、りがとう……ございます……」

 ようやく言葉を口に出来るようになった。
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