家族に裏切られ全てを奪われた私は、辺境地に住む強くて心優しい彼に出逢い、沢山の愛と優しさに触れながら失ったモノを取り戻す
 ギルバートに背負われて市場を回るエリスは、通りすがる人々が自分に視線を向けてくる事に気付くと、その視線が怖くて更にフードを目深に被り直す。

「やはりここは人が多くて疲れるな。さっさと用を済ませて出るとしよう。もう少し我慢してくれ」
「はい、気を遣わせてしまって、すみません」
「いや、構わない。周りの視線が気になるようなら顔を伏せたままでいていい」

 エリスが何に怯えているのかが分かっているギルバートは『気にするな』と伝え、一軒の店の前まで歩いて行く。

 けれど、ギルバートを見た店主の顔はどこか険しいものだった。

 それは恐らく、ギルバートの顔にある大きな傷と、彼が背負っているエリスにあるのだろう。

 怪しむように見つめるだけで、相手をしようともしない店主に気にする様子も無いギルバート。

「すまないが、二十代の女性が好む服を数着、見繕って欲しい。肌着や靴なども頼む。金はこれくらいで足りるだろうか?」

 相手にされていない事は重々承知の上で、ギルバートが店主にエリスのような女性が好みそうな服を見繕うよう頼むと、腰に下げていた袋から札束を取り出しカウンターに置いた。

 これには店主も驚いていたが、目の前にある大金に気を良くしたらしく、態度を改め丁寧に接客し始めた。

「勿論でございます。それですと、この辺りなど如何でございましょう? こちらはどれも若い娘にも人気の品でございます」
「そうか。ならばそれと、他にも数着頼む」
「はい、畏まりました」

 買い物をしている間もエリスは一切顔を上げはしなかったのだが、彼女はそれを申し訳なく思っていた。

 しかし、今の自分の格好や万が一にもシューベルトたちが捜していたらと思うと姿を見せる事に抵抗があり、どうしても顔を上げる事が出来なかったのだ。
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