奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 あと、こっそりディーデリックが訪問してくる時にも。
 エリュシアの部屋には、たくさんのノートが届けられた。商人であるトーマスが、宝石の目利きを学ぶ時にまとめたものだそうだ。
 基本的な宝石や貴石の名前ぐらいは知っているが、あと知っているのは魔宝石合わせて魔道具に使った時に、どんな効果があるか程度だ。
 例えば、質の良い水晶は魔力を増幅する効果があるとか、エメラルドを用いれば、風に関係する魔道具を制御しやすくなるとか。
 だが、トーマスが持ってきた資料はもっと詳しいものだった。
 どの宝石は、どこの産地のものが最上とされているか。一般的に最上とされているより、通好みはどこの産地のものか。
 カッティングの方法、それらを加工する職人や工房の名前。華やかな装飾が上手な者、小さな石を数多く集めて台座に嵌め込む技法を得意とする者。
 名前のつくような有名な石について覚えることは、本当に多かった。

「私、これを全部覚えられるかしら?」

 つい、弱音を零してしまう。魔道具師としての知識の他に、こんな知識も必要になるとは思ってもいなかった。

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