奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「……俺の方もだ。古語は、しっかり学んだつもりだったのだが」

 学者としてさまざまな古文書を調べているディーデリックもまた苦戦していた。
 エリュシアの部屋をたずねてきたのは、時を戻ったという事実を分かち合えるのが二人だけだから。
 本来、女性の部屋に入った時には扉を少し開けておくものだが、二人に関しては例外だ――万が一にも、二人の会話を聞かれるわけにはいかないから。

「トーマスさん、他の人達にどう説明しているのかしら」

 宝石の美しい挿絵が添えられたページから目を上げ、エリュシアはじっとディーデリックを見る。
 二人、向かい合わせでテーブルに座っている。このテーブルも、トーマスが用意してくれたものだった。

「二人で勉強していることになっているな。俺も、トーマスの支援を受けている身だから」

 驚いたことに、ディーデリックもまたトーマスの屋敷に部屋を用意してもらっていた。
 使用人達には『トーマスが後見している将来有望な学者』として紹介されているそうだ。
 この部屋もまた、二人が集中して勉強できるようにという計らいで用意されたもの。
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