奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 古文書を研究している学者というふれこみで、あちこちで調査を進めているディーデリックは、このひと月ほどトーマスの屋敷には姿を見せていない。
 皇太子として政務にもあたらねばならないのだろうから、皇宮を抜け出すのが大変なのはわかる。
 それに、エリュシアには手の出せない領域で、彼は動いている。
 トーマスやエリュシアが、貴族との面会の中で集めた情報を彼に渡す。
 たとえば、財力、領地の状況、交友関係、皇帝に対する不満の有無――彼はその情報をもとに、自分の味方を増やしているようだ。

(一度目の人生では失敗してしまっていたから、味方を増やせているのはよかったわよね……)

 計画は着実に進んでいるのに、どうしてだろう。胸騒ぎがする。

(……ディーデリック様が、皇帝の動きは追ってくれているはずだけれど……)

 そろそろ、ディーデリックに連絡をした方がいいかもしれない。

 トーマスとシャリーンが面会する。
 その知らせを受けたディーデリックは、二人が対面する日に屋敷に戻ってきた。
 学者としての変装まで完璧だ。

「……疲れているように見えますね」
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