奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 宮廷魔道具師ともなれば、面会を希望する者も多いだろう。これだけ短期間で面会できるというのは、やはり、手紙の内容に食いついたからだろうか。

(……だからって、これはどうかと思うのよ!)

 エリュシアは、ひとりではなかった。
 ひとりで行かせるのは心配だと、ディーデリックが同行しているのだ。

(魔道具を使わずに、ここまで別人に見せるのもすごいけれど……)

 トーマスの顔の広さを改めて思い知らされた気がする。ディーデリックを変装させたのは、トーマスの知人だ。
 お忍びで遊びに出かけたい貴族に頼まれ、変装させることが多いという。そのための化粧品や服等をトーマスの店で購入しているそうだ。その関係で、今回の依頼も快く引き受けてくれた。
 変装したディーデリックは、実年齢よりも十歳以上年上に見えた。
 髪は茶色に染めていて、しっかりと鍛えられた体格は、服の下に綿を仕込むことででっぷりと太った体格に見せている。
 背の高さは誤魔化しようがないが、重い腹を支えるような歩き方を変装させてくれた人にみっちりと指導され、中年太りの体格を見事に作り出していた。
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