奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 トーマスの信頼する番頭という立場で、エリュシアに同行している。腹には綿だけではなく鉛も仕込んであるそうで、歩き方が重そうに見えるのも納得だ。
 通されたドミニクの工房を見まわしてみると、様々な素材や作りかけの魔道具が並んでいた。
 素材を加工するための道具は綺麗に手入れされていて、いつでも使えるように整理整頓されている。

(……たしかに、仕事には熱心みたい)

 その工房を通り抜けた先が、客に対応するための場として使われているようだ。こうして自分の仕事ぶりを見せておこうという意識が働いているのかもしれない。

「……それで、私に話とは?」

 皇帝に最も信頼されている魔道具師というだけあり、ドミニクは鷹揚な手つきでエリュシアを招く。

「エリア、だったか。商人のトーマスと専属契約を結んでいると聞いたのだが」
「はい……ドミニク様は、大変高潔な方であると聞き及んでおります。どうか、私を助けてはいただけないでしょうか」

 ドミニクが高潔だなんて噂、どこにもない。
 だが、そう言っておけば『エリア』がドミニクに助けを求めるのもおかしくはない。
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