奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 嘘をつくことにも、良心の咎めはまったく感じなかった。相手が敵だと思えば、このぐらいはやるべきだとも思っている。

「助ける?」
「はい。両親は帝国人ですが、私は王国で生まれ育ちました。雇い主であるトーマス様に見出され、帝国にやってまいりました。師が早くに亡くなったことから、新たに導いてくださる方を探していたのです。まだ、一人前とは言い難いですし……」

 今日身に着けてきたのは、それなりに裕福だが直接貴族との繋がりはない庶民が精一杯着飾った雰囲気の出る衣装である。
 庶民なので、ドレスではなくジャケットとスカートの組み合わせだ。レースは高価な品なので、ブラウスの襟にほんの少し飾られているだけ。
 あとは、飾り気のない茶のジャケットと共布のスカート。どちらも明るい茶色で、ジャケットの袖口にはぐるりと一周、こげ茶の線が入っているのが唯一の飾りだろう。
 装身具は何も身に付けず、髪も首の後ろで束ねただけ。
 働いてはいるが、そこまで裕福なわけではない女性にふさわしい装いになっているはずだ。
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