奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 母が存命だった頃は、エリュシアに魔道具作りの手ほどきをしてくれた。
 それは、もしかしたらいずれエリュシアがこの離宮から追い出されると想定し、身を守るすべを与えてくれたのかもしれない。

(お母様が予想していたのとは逆の意味で、出ていくことになったけれど)

 帝国でも、小さな工房を与えられた。本当に小さな工房で、素材も少ししか貰えなかったから、たいした魔道具は作れなかった。
 それでも、魔道具に向き合う時間は楽しかったと思いながら、棚に手をかける。
 マルタがこの工房の魔道具に手を出していないのは、工房や棚の扉に鍵がかけられているからというだけではない。
 母の魔道具にはすべて母の印がつけられていて、売り払えばどこの誰が作ったものなのかわかるのだ。
 その点、金銭や母の宝石といった足のつかないものだけ盗んでいるあたり、マルタもよく考えている。
 もっとも、過去に戻ってきたらしい今、容赦するつもりはない。

(……まずは、トーマスさんを捜さなくちゃ)

 かつて、母が魔道具を卸していた商人の名は、トーマス。
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