奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 彼と話をできれば、今後のことも相談できるかもしれない。ここから逃げるには、ひとりでは無理だ。
 誰かの手を借りなければ。そう考えたら、トーマスしか思い当たる人はいなかった。
 もともと縁談が来たのは、異母姉のザフィーラだった。
 一歳年上の彼女の母親は、有力貴族の娘かつ正妃であるデリアだ。
 いくら大国といえど、年老いた皇帝に娘を嫁がせるなんてとんでもないと、当時デリアは大騒ぎした。
 時戻りする前の人生の記憶では、帝国からの使者が到着した段階で、ザフィーラはすでに結婚していたということにされた。そして、その代わりにエリュシアが嫁がされることになった。
『母親の生まれた国に行けるのだ。お前も幸せだろう』

 なんて、婚姻を告げた時の父は言っていたが、一度も行ったことのない隣国に懐かしさを感じるはずもなかった。

(……私が逃げたら、ザフィーラが行くしかないのかしら)

 心の中をぐるぐると巡る想いを抱えながらも、エリュシアは丹念に棚の中を調べていく。
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