奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 だが、ザフィーラも、ディーデリックに嫁ぐのならば喜んで受け入れるのではないだろうか。
 アスタリア帝国の皇太子で、容姿に優れ、年齢も釣り合っている。
 そしてなにより、姉妹達の中で一番いい縁組の相手だ。万が一、ディーデリックとの縁談に気が進まなかったとしても、縁談を押し付ける相手はもういない。

「……エリュシア。いい機会だ。一度、王国に戻るというのはどうだ?」

 ディーデリックからの提案に、エリュシアは目を瞬かせる。
 今、帝国で暮らしているのは魔道具師『エリア』だ。商人見習い『リア』としての顔も持ってはいるが、どちらにしても『エリュシア』の名は捨てている。
 今さら母国に戻れるはずもない。

「ですが、私は死んだことになっています」
「それが誤報だったとしたら?」

 その言葉に、エリュシアは考え込む。そんなこと、できるのだろうか。

「絶望して、川に身を投げ――けれど、親切な商人に助けられた。その時、君は記憶を失っていた、としたらどうだろう?」

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