奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「……なぜ、今まで戻ってこなかったのだ?」
「それが……記憶を失っていたそうです」

 侍従の説明によれば、トーマスという商人が川から引き上げたのだそうだ。川の中で長い時間を過ごしたからか、引き上げられた時の彼女は記憶を失っていた。
 そして、助けた商人の元で見習い商人として修業を始めた。
 自分がどこの誰か覚えていなくとも、身に着けた読み書き計算といった知識は失われていなかったらしい。
 その中で、魔道具師としての才能を見せたそうだ。帝国でも、有能な若手の魔道具師として知られ、魔道具師ギルドの長であるシャリーンの指導を受けているらしい。
 そう言えば、エルフリーダは魔道具師だったと今になって思い出す。
側妃となってからも、工房でなにやらせっせと作っていた。あまり大がかりなものは作っていなかったが、エリュシアが生まれるまでの間は、時々作った魔道具を見せてもらった記憶もある。
 もしかしたら、エリュシアの魔道具師としての才能は、エルフリーダ譲りだったのかもしれない。

「記憶を失っていたか……それにしても、なぜ、身元不明者が引き上げられたという報告が来なかったのだ?」
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