奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「この手紙によれば、帝国で発見したようです。身元のわかるようなものを何も身に着けていなかったので、帝国人だと思っていたらしく」

 トーマスという商人は、帝国から王国へ商品の売り込みに来て、帰宅する途中でエリュシアを引き上げたそうだ。
 たしかに、エリュシアが身を投げたとされている川は、帝国に流れ込んでいる。
 上流である王国に身元引受人の問い合わせが来なかったのは、エリュシアの顔立ちから帝国人だと判断したからのようだ。
 記憶にある限り、エリュシアは帝国人である母そっくりの容貌だった。黒い髪も金色の目も、この国では珍しいが、帝国では比較的よく見られるらしい。

「面会、なさいますか?」
「……あ、ああ。そうだな……面会をしないというわけにはいかないだろう」

 記憶を取り戻したエリュシアだったが、王国に戻ることには否定的だったようだ。
 だが、エリュシアを救った商人のトーマスが、せめて生存は知らせるべきだと説得し、それが今回の帰国に繋がったのだそうだ。

(トーマス。帝国のトーマス……そう言えば、何度か商品の売り込みに来ていたな。魔道具だったか)

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