奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「トーマスとやら。娘を保護してくれたそうだな」
「は、はい」

 父と対峙しているトーマスは、緊張の色を隠せないようだ。ディーデリックと会話するのには、だいぶ慣れたようだが、国王と面会する機会はそう多くない。

「その娘、エルフリーダに似ていると思うのだが。私の娘だとは思わなかったのか?」

 そういえば、母をこの国に連れてきたのは、トーマスだった。それを思い出すとは、国王も意外と鋭いかもしれない。

「お、恐れながら……私は、エルフリーダ、いえ、エルフリーダ様とは二十年近くお目にかかっておりません。彼女の顔ももうおぼろげで……エリュシア殿下が記憶喪失でなければすぐにお連れしたのですが、ご自分の名すら忘れているような状況でしたから」

 申し訳なさそうに、トーマスはぺこぺことして見せた。

「エリュシア、どうして身を投げたのだ?」
「……お父様」

 エリュシアの金色の目に、にみるみる涙が盛り上がる。
 耐えきれないというようすで、エリュシアは、両手の間に顔を埋めてしまった。
 顔を上げられないのも、細い肩が震えているのも。
 もちろん全部演技である。
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