奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 慰めるようにトーマスがその肩に手をかけ――相手が誰であるのかを思い出したようにはっと飛びのき、平伏した。

「エ、エリュシア殿下は、当時のことを思い出すのもおつらい様子。私が代わりにお話をしても……?」

 トーマスの言葉に、両手で顔を覆ったままうなずいて見せる。
 自分で話しても問題はないのだが、これから先のことを思えば『思い出すのもつらい記憶』と印象付けておきたい。
 トーマスは、流れるように語っていく。
 エルフリーダが平民であったことから、エルフリーダもエリュシアも、日頃からひどい苛めを受けていた過去。
 エルフリーダが存命だった頃はまだよかったのだが、エルフリーダがいなくなって以降、ますますその苛めが酷くなったこと。
 特に、エリュシア付きの侍女だったマルタ。彼女は、国王がエルフリーダに与えた宝飾品を奪っていた。
 それでも耐えてきたのだが、あの日耐えられなくなったのは、隠しておいた最後の形見をマルタに発見され、奪われたから。
 国王がしかめっ面になった。マルタの行動を思い出して、不快になっているのだろう。彼女を増長させたのは、この王宮にいる人々だというのに。

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