奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 男の子が、何を言っているのかまったく理解できなかった。というか、当時のエリュシアは、自分が王女であるということもあまり認識していなかったのだ。
 エリュシアの世界は、母とエリュシアと使用人、それにたまに訪れる父だけで成立していたから。
『……やめて!』

 返事をしないエリュシアに苛立ったのか、男の子はエリュシアが手にしていた人形を取り上げた。そして、それを手が届かないよう持ち上げてしまう。
『これ、返してほしかったら俺と追いかけっこしようぜ! 俺を捉まえたら、返してやるよ』

 あはは、と高い声を上げた男の子は走り始めた。慌ててエリュシアは後を追う。だが、エリュシアより年長の男の子に追いつけるはずもない。
 息がぜいぜいして、目の前が暗くなっても、男の子は許してくれなかった。
 エリュシアが立ち止まると、わざとらしく近くに来ては、エリュシアの人形を目の前でふらふらさせるのだ。
『返して!』

 と、エリュシアが飛びつこうとするのが面白いらしい。
 何度もそんなことが繰り返されるうち、エリュシアも苛立ってきた。
『返してって言ってるのに!』

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