奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 泳いだことなんてあるはずないから、ずぶずぶと沈み込んでしまう。助けを求める声も上がらなくて、ただ、意味のない言葉を発するだけ。
 男の子の方も、助けを求めるでもなく、そのまま走り去ってしまった。
 ――運が悪かったら、エリュシアはあの場で命を落としていただろう。
 それが、異母兄であるヴァルスとの初対面だった。

 エリュシアの意識が、ゆっくりと浮上してきた。

(……本当、あの時死んでもおかしくはなかったのよね)

 目を開けば、視界に飛び込んでくるのは母と暮らしていた懐かしい離宮の光景。
 あの時は、エリュシアが戻ってこないのに気づいた母がたまたますくい上げてくれたから助かった。
 庭園を警護して回っている騎士でさえ、エリュシア達が暮らしている場所の見回りはさぼりがちだったのに、ヴァルスがわざわざ来た理由は今でもわからない。
 母が、国王にエリュシアが死にかけた件について話をしたかどうかはわからない。
 だが、それ以降、異母兄や異母姉達にとって、エリュシアは何をしてもいい相手になったようだ。
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