奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「……もちろんだ。だが、ディーデリック皇太子。その娘の母は平民なのだが」

 ちらりと父の目が、エリュシアに向けられる。

「知っている。帝国の出身者なのだろう? ならば、エリュシア王女は、帝国での暮らしに馴染みやすいだろう。また、ザフィーラ王女もとても魅力的な姫君だ」

 ちらりと横目で隣を見る。
 信じられないと言いたそうに、ザフィーラは、顔を強張らせていた。怒りの色を見せないようにしているのはさすがだが、表情を完全に殺すことはできていない。
 ディーデリックの発言が、よほど腹立たしかったのだろう。

「……そうか」

 それきり父は、何も言えない様子だった。なんとも盛り上がらないままに、出迎え儀式は終わる。
 今夜は、歓迎の宴が開かれることになっている。いったん支度のために引き上げ、改めて広間に集まるのだ。
 退室しようとしていたディーデリックは、エリュシアの前で足を止めた。そして、わざわざ話しかけてくる。

「のちほど、ダンスのお相手を願えるだろうか」
「……はい」

 伏し目がちにそう返すエリュシアに、笑ったディーデリックは顔を寄せて囁いてきた。

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