奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 この人は、気づいているだろうか。再会してから、エリュシアが彼を『お父様』と呼ぶのは、公的な場だけであることに。
 とっくの昔に、エリュシアの気持ちはこの人から離れてしまっている。

「そ、そうだ。他に必要なものはないか? 使用人を増やすのもいいぞ」
「必要ありません。今まで地味な生活をしていたので、華やかな生活には慣れていないのです。メリアと彼女が指示を出している使用人達だけで十分ですわ」

 言外に、「まともな使用人も与えてもらえなかったので、自分のことは自分でするしかなかった」と告げているのだが、目の前の男は気づいていないだろう。
 まあいい、この男に家族としての情を求めるのはとっくにやめている。

「……エリュシア。私は、そなたを愛しているのだ」
「嬉しいですわ、陛下――ですが、そろそろ支度を始めないといけないんですの」
「……わかった」

 着替えると告げれば、国王は慌てた様子で立ち上がった。
 支度が間に合わず、エリュシアが遅刻をするのを恐れたのだろう。

(……本当、今さらなのにね)

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