奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 あと十年早かったら、違う関係を築けたかもしれないけれど、もうすべてが遅いのだ。父の愛を求めて泣く時間は、とっくの昔に終わってしまった。
 それなのに、胸の奥がわずかに痛む。エリュシアは、その痛みからは目を背けた。
 夜会のためにエリュシアが用意したのは、ディーデリックを出迎えた時にまとっていたのとはまた違う趣のドレスだった。
 今度身に着けたのは、大人びた深いグリーン。それに、ドレス本体よりもやや濃い色に染めたレースを合わせる。
 謁見の時とは違い、夜会用のドレスの胸元はやや深く切れ込んでいるが、繊細なレースを喉元まであしらい、肌をほとんど見せないようにしている。
 首飾りや耳飾り、髪飾りにいたるまで揃いの品だ。これだけの品を入手するのは、王族でも難しい。すべてが魔道具となればなおさらだ。
 一見地味な装いだが、見る者が見れば、本来の価値に驚くだろう。

 夜会が始まるのと同時に、ディーデリックはたくさんの女性に囲まれた。
 王女へ縁談の申し込みに来たのは広まっているが、まだ正式に婚約したわけではない。
 割り込む隙があるのではないかと、皆思っているに違いない。

< 199 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop