奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「エリュシア王女」

 と、エリュシアの名を呼んだディーデリックは、蕩けそうな笑みを向けてくる。
 この場での彼の行動は演技だとわかっているのに、エリュシアの頬には勝手に血が上った。
 この場で、ディーデリックとエリュシアが親しくしていると周囲に見せつけるのは、このあとの計画に繋がっている。
 ディーデリックが、出会ったばかりのエリュシアに夢中になっている様子を見せたのなら。
 未来の皇妃をこの国から出したとなれば、貴族達は帝国からこの国へのなんらかの優遇措置を期待するだろう。この国に有利な通商条約を結ぶとか、国境の守りに兵を出し、貴族達の負担を軽くするとか、あるいは帝国の有力者とこの国の貴族の間に縁談を結ぶとか。
 だが、この国の貴族には、なんの恩恵ももたらすつもりはない。
 母が存命だった頃も、母とエリュシアに味方してくれる者はいなかった。
 母が亡くなってからはなおさらだ。
 エリュシアは放置された。忘れ去られた。
 一人、離宮で寂しく暮らし、ザフィーラの代役で帝国に送り込まれ、殺された。
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