奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 息の合ったステップ。エリュシアが最高に美しく見えるよう気遣ってターンさせてくれる腕。
 右に左に激しく入れ替わりながら踊る二人は、踊っている人々の中でもひときわ目立っていた。
 二曲続けて踊ったところで、ディーデリックはエリュシアを広間の隅に置かれているソファへと誘った。
 通りがかった給仕から飲み物を二人分受け取り、エリュシアに渡してくれる。炭酸が入っていて、しゅわしゅわとした果実水。

「美味しい」

 シロップで甘味を足された果実水は、心地よく喉を潤してくれる。並んで座ったディーデリックを見上げれば、彼は蕩けそうな甘い目でエリュシアを見つめてきた。

(……さて、どうなるかしら)

 ザフィーラをディーデリックに嫁がせるのは難しいと、王家の人達が考えたなら。
 貴族達はディーデリックと会話をするのは諦めていないのか、遠巻きにこちらを見ているが、ディーデリックとエリュシアの間に割って入るのは諦めたようだ。
 そんな中、人の輪を割ってこちらに向かって歩いてくる人がいる。顔を上げれば、ゆったりとした足取りでヴァルスが近づいてくるところだった。

「……話をできないか」
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