奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「行儀? そんなのどうでもいいわ。それより、どうなっているのよあの女!」

 苛立ったザフィーラは、手の中で閉じた扇をこね回している。扇からぎしぎしと聞こえてはいけない音がした。
 もしかしたら、そのままポキリといってしまうかもしれない。

「それで、どうだった?」
「聞く耳も持たないという感じだったな――帝国の皇太子がそんなに偉いとでも言いたいのか」

 ため息をついたヴァルスだったが、頭ではわかっていた。
 帝国とこの国の国力の違いを考えれば、帝国の方が明らかに上である。皇太子がこちらを目下に見るのも当然と言えば当然だった。

(面会を求めるだけで、ずいぶんと手間取らされたからな……)

 苛立ちを隠そうともしない妹を見ながら、内心でため息をつく。
 面倒な手続きを乗り越えてディーデリックと面会の機会を得たまではよかったが、会話の内容はヴァルスが望んでいたものとはまったく異なる結果に終わった。
 ザフィーラを娶ってもらうつもりだったのに。

「……いい返事は来なかったということね」
「ああ。お前が帝国に行けば、もっとやりようはあるのだろうがな」

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