奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 父が、離宮を顧みてさえいれば、エリュシアが逃げ出すことはなかっただろう。
 アレが逃げ出したのは、父が離宮の使用人達をきちんと監視できていなかったからだ。

「……なんて、考えてもしかたないか」

 ザフィーラの向かい側に腰を下ろし、ため息をもうひとつ。
 帝国で、どんな暮らしをしていたのかはわからない。だが、こちらを見るエリュシアの目は、完璧に他人を見るものであった。
 ヴァルスと半分血が繋がっているというありがたい事実を忘れ去ってしまったらしい。

(この国の王女ならば、この国のために役立つべきだろうに)

 ザフィーラが嫁いだ方が、この国のためになるのだ。ならば、エリュシアもそうなるよう努力すべきではないか。

「……お兄様、邪魔なのよ、あの娘」

 可哀想な扇が、またもやぎしぎしと不穏な音を立てる。扇をソファに放り出したザフィーラは、テーブルの上に身を乗り出した。

「ねえ、お兄様。邪魔なものは、片づけてしまったらいいのではないかしら?」
「片づける?」
「ええ。あの女を殺してしまえば、王国の王女は私一人。ディーデリック様も、私を選ぶしかないじゃない」

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