奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「エリュシア、君からも言ってくれ。一人知らない国に嫁ぐのは不安だろう?」
「問題ありませんよ。帝国の生活にもだいぶなじんでいますし」

 ヴァルスの言葉には、首を横に振る。ここでは一度、彼を突き放しておきたい。
 母を失ってからこの国で暮らした年月よりも、帝国に生活の場を移してからの方がずっと幸せだ。

「……そうか」

 明らかに軽く扱われ、ヴァルスは苛立たしそうに口元を捻じ曲げた。

「そちらの国と我が国の縁は、エリュシアと俺で充分だ」

 にっこりと笑ったディーデリックは、ヴァルスを追い払うように手を振った。ヴァルスは何か言いたそうに口を開いたけれど、すぐに唇を結ぶ。
 皇太子を相手にここで騒ぎを起こすのは得策ではないと悟ったのだろう。立ち上がり、一礼して出ていく。
 ほっとして、エリュシアは大きく息をついた。
 幼い頃のこととはいえ、ヴァルスには殴られたり蹴られたりした。あの頃の恐怖は、簡単に消えるものではない。

「焦っているようだったな」
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