奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 壁に映し出されたのは、見知らぬ女性が室内を物色している様子だった。服装から判断すると侍女だろうか。

「……なるほど」

 録音機、再生機では音声の記録と再生しかできないが、記録機と名付けたこれは魔道具の置いてある一定範囲で起こった出来事を記録できる。
 ディーデリックがドミニクの裏帳簿を記録するのに使ったのもこれだ。
 もっとも、記録できるのは魔道具の効果範囲内で起こった出来事だけ。音声は記録できない。
 ベッドサイドに置いてあったランプに手をかけた。こちらが録音機だ。
 スイッチを押すが、足音とごそごそという音が聞こえるだけ。
 さすがに、この状況でぶつぶつと独り言は言わないか。
 壁に映し出されている光景は、忍び込んできた女がランプの向かい側にある棚に置いた茶葉の缶を取り上げたところだった。
 蓋を開き、ポケットから取り出した瓶の中身を缶に入れる。
 それから中身を戻して蓋を閉め、棚に合った位置に丁寧に戻す。
 きょろきょろと室内を見回して、違和感がないか確認しているようだ。そして、そのまま部屋を出ていった。
 茶葉の缶を取り上げたエリュシアは、ため息をついた。

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