奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 縛られた老人は、動揺した目でディーデリックを見上げている。『毒を売ったのは』と問いかけてはいるが、口を塞がれているので返事はできない。
 エリュシアは、この部屋にはいない。こんな状況に、彼女を立ち会わせるつもりはなかった。

「素直に吐いた方が身のためだぞ。俺は、そこまで気が長くはないんだ」

 しゃがみ込み、あえて相手と同じ目の高さに合わせてにやりとしてやる。震えあがった老人は、ますます怯えた表情になった。

「お前、俺が何者か知っているか?」

 老人の目が泳ぎ、そして首肯する。さすがに、ディーデリックの顔は知っているようだ。

「つまり、俺は目的を果たすためには、どんなことだってやるつもりでいる。我が帝国に害を与える相手は容赦しない。それに、先に言ったように、気が長くはない――いや、とても短いんだ。わかるな?」

 腰に吊っていた短剣を鞘から抜き、刃をぴたぴたと男の頬に当てる。
 側面部分だから、まだ切れたわけではないが、刃の冷たい感触に恐怖を煽られたのだろう。男は身を震わせた。

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