奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 重ねて脅してやったが、『帰してやる』という言葉にホッとしたらしい。あきらかに、身体から力が抜けている。

「今日のことは、誰にも話すな。話したら――」

 抜いたままだった短剣を、そのまますっと横に引く。これで、何を意味しているのかは通じたはずだ。

(……甘いかもしれないな)

 本当なら、この場でこの男を殺すべきなのだろう。だが、そこまではやりたくなくて、脅しをかけるのにとどめておく。

「お前が戻らねば、店の者達が不安になるな?」
「え、ええ……それは、まあ……」

 短剣で、彼を戒めていた縄を切ってやれば、ようやく落ち着きを少し取り戻したようだ。ディーデリックの言葉に頷く余裕も出てきている。

「では、店の者には手紙を書け。一週間ほど留守にする、とな。今、お前に死なれては困る。しばらくの間、かくまってやる」
「あ、ありがとうございます!」

 ディーデリックの手を離れたら、きっとこの男は殺されるだろう。彼の口を必要とする間は、殺されるわけにはいかない。

 * * * 



 帝国へ戻る日が近づこうとしていた。
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