奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 ディーデリックは、『婚約者』としてエリュシアを連れ帰るつもりだと周囲には広めている。
 エリュシアも、この国に残るつもりはない。ディーデリックと共に、帝国に行くつもりだ。
 いや、帝国に『戻る』が正解だろうか。帝国での生活の方が、ずっとエリュシアには馴染んでいる。
 今夜まとうのは、ディーデリックが用意してくれたドレスだ。黒で刺繍を施した銀のドレスは、彼の色だ。
 そこに合わせるのは、肌を美しく見せる魔道具の一揃い。侍女達の腕もいいが、魔道具のおかげで、よりいっそう美しく見える。

(……喉から手が出るほど、この魔道具が欲しいでしょうね)

 デリアも、ザフィーラも、この魔道具が欲しいと思うだろう。美の追求は、彼女達にとっては命と同じぐらい大切なものだから。

「……エリュシア」

 迎えに来てくれたディーデリックが手を差し出す。エリュシアは、彼の手を取った。
 彼の袖に刺繍されているのは、エリュシアの色を使った刺繍だ。
 衣装そのものを揃いにしているわけではないが、見る人が見ればわかるはず。一応、王族と言われるレベルの人ならばなおさら。
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