奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「はい、終わりました……全部!」

 自分から彼の身体に腕を回せば、同じように腕を回される。
 終わったのだ、全部――エリュシアがこの国でなすべきことは。
 ただ、包まれた腕の温かさに安堵した。

 * * *



 帝国への帰路についたのは、その翌日のことだった。
 国王と共に家臣達が見送りに出ていたが、エリュシアは国王には目も向けなかった。
 彼はエリュシアに声をかけようとしていたけれど、ディーデリックはそれを許さなかった。父と娘、最後の会話すらないままエリュシアは馬車に乗り込んだ。
 彼と話すことなんてなにもないから、これでいい。
 そして、ディーデリックと並んで座ったエリュシアは、馬車から窓の外を眺めている。
 故郷の風景が、だんだんと遠ざかっていく。
 沿道で帝国の皇太子と王国の末姫を見送っている人々は、王宮で何があったのかまだ知らされていない。ディーデリックとエリュシアの婚約を喜ぶ声ばかりが聞こえてくる。

(……もう二度と、ここに戻ることはないでしょうね)

 それでも、心に残るのは寂しさではなく、安堵だった。帝国へ戻れると思うと、心が軽くなってくる。

< 256 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop