奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「……後悔はしていないか?」

 向かい側に座ったディーデリックが、心配そうに声をかけてきた。

「いいえ。もう、この国は私の故郷ではありませんから」

 エリュシアにとって故郷は、母と過ごした離宮だった。そして今は、ディーデリックのいる場所こそが新しい故郷になる。

「君が傷ついているのではないかと、心配だった」
「……少しは、傷ついているかもしれません。でも、それよりも――やっと、前に進めるという気持ちの方が強いんです」
「……それなら、よかった」

 ディーデリックは、安堵したように微笑んだ。
 だが、すぐに彼は表情を引き締める。
 まだ、皇帝という敵が残っている。
 けれど、ようやくエリュシアは母の代から続く因縁から解き放たれた。
 少しぐらいは、安堵してもいいだろう。ディーデリックの肩に、頭を預けてみる。

「……もうひとり、退場してもらわなければならない人がいますね」

 ふと、口から零れ出た。
 母の敵は取れたけれど、突き刺された胸の痛みを忘れたわけではない。

「ああ。きっと、そちらもうまくいくさ」

 あと少し、もう少しだ。皇帝を倒したら、その時こそきっと――。

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