奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「ああ。魔物から取れる魔宝石は、品質にばらつきがあるからな。人間が作ったものがあるのなら、その方がいい」

 そう言えば、母からそんなことも聞いたような記憶がある。
 だが、魔物から取れた魔宝石は人間には作れない大きさのものもある。どちらも、魔道具には必要だ。

「ありがとうございます。また来ますね」
「高く買い取るからな」

 魔宝石を売ってほしいというのは、あながち冗談でもなかったらしい。現金は心もとなかったから、彼の言葉は嬉しかった。
 魔宝石なら、素材がなくてもエリュシアの魔力だけで作れる。これなら、逃走資金の調達も想定していたより簡単そうだ。
 こうして、新たな身分を獲得したエリュシアは、商人ギルドに立ち寄って、トーマスへの言伝を頼んでから離宮へと戻ったのだった。

 一日おきに商人ギルドに伝言がないか聞きに行くと伝えておいたところ、二度目の訪問の時、トーマスは商人ギルドでエリュシアを待ってくれていた。
 五十代、というところだろうか。容姿はいたって平凡で、特に目立ったところは見当たらない。
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