奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
エピローグ
椅子に座ったエリュシアは、そっとドレスを指で撫でてみた。
 伝わってくるのは、最高級のシルクの感触。クリスタルをあしらった繊細な刺繍。
 鏡に目を向ければ、見返してくるのは美しく装った花嫁だ。縁にレースをあしらったベールに、黄金のティアラ。

(……やっと、この日が来たわね)

 淡く紅を差した唇で、自分自身に微笑みかける。
 ――クラニウス王国は、形だけのものとなった。
 クラニウス国王は、退位。跡を継いだのは、エリュシアだ。
 婚姻で国外に出た兄姉達は、誰も文句を言わなかった。いや、言えなかったが正解か。
 退位を決められた国王は、慌ててエリュシアに縋ってきたけれど――小さな領地を与えて、そこで隠退生活を送ってもらうことに決めた。
 それを告げたのはエリュシアの送った使者である。
 彼と、これ以上顔を合わせる必要は感じられなかった。領地の差配は、ディーデリックの直属の部下が務めることも合わせて決めた。
 元国王は、一生飼い殺しである。
 彼にとっては、耐えられない恥辱となるだろう。娘が帝国の妃となったのに、彼は何一つ恩恵を受けられないのだから。

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