奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 エリュシアのことを、きちんと王女として扱ってくれるらしい。どこぞのマルタとはえらい違いだ。エリュシアは、黙ってうなずいた。

「しかし、陛下がそれはお許しにはならないでしょう」
「……そうよね。それは、わかっているの」

 エリュシアの口から零れたのは、小さな声。

「だからね、逃げられないかと……」

 言うつもりはなかったのに、つい、口から零れ出た。
 エリュシアの言葉に、トーマスは顔を強張らせた。彼の表情を見て、エリュシアもはっとする。

「ごめんなさい、トーマスさんを巻き込むつもりじゃなかったの。ただ、私の魔道具を扱ってもらえないか聞きたかっただけで」
「いいえ、うかがいましょう。私は、エルフリーダ様に償わなければならないのだから」

 たしかに母がこの国に来たのはトーマスの誘いだったと聞いている。だが、母も自分の腕を試したくてそれを受け入れたのだ。
 トーマスが罪悪感を覚える必要はないと言ったのだけれど、それでも彼の罪悪感を消すことはできないようだ。

「……逃げたい、というのは?」
「あのまま離宮にいたら……私、近いうちに殺されるような気がして……」

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