奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 正確に言えば、あのまま王宮にいたら皇帝に嫁がされて彼に殺される――だが、トーマスにはそこまでは言えなかった。彼の方だって、言われても困るだろうし。

「話してください」

 トーマスが真剣な顔をするから、エリュシアもぽつぽつと語ってしまう。
 彼の言葉に乗せられたのは、商人としての彼が優れているからかもしれなかった。
 離宮で母と暮らしていたこと。母に魔道具の作り方を教わったこと。母子の生活は静かだったけれど、母の愛が感じられるようで嬉しかったこと。
 母がいなくなってから、どんどんエリュシアの扱いが悪くなっていったこと。
 離宮にはごくわずかな数の使用人しかいないのだが、その中でも最もエリュシアに近い侍女のマルタが、エリュシアを虐げていること。
 母の形見が、マルタによって奪われていること。
 異母兄や異母姉達とは折り合いが悪く、幼い頃は殴る蹴るの暴力を受けたり、池に落とされたりしたことがあったとも。

「それに……もしかしたら、お母様は毒を飲まされたのではないかと思うこともあって」

 父は、母が病に倒れるまでは、まれに離宮を訪れることもあった。
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