奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 彼の目の鋭さは、商人というよりは歴戦の騎士と言った方が近いような気がして、エリュシアは目を瞬かせた。

「私は、エルフリーダ様をお救いできなかった。ならば、エリュシア様、あなたをお救いすることでせめてもの償いとしたい」

 真剣な目でそう言われ、エリュシアもそれ以上断る言葉を持たなかった。
 トーマスと立てた計画は、さほど複雑なものではなかった。
 もともと離宮を監視している者の数は少ないし、使用人達もマルタに「具合が悪いから放っておいてほしい」と言えばエリュシアに声をかけようとしない。
 脱出しても、一晩ぐらいなら気づかれないだろうと予想している。その間に、遠くまで行ってしまえばいい。

「エリュシア様と『エリア』は別人であると認識されております。帝国に渡ったら、それを利用しましょう」

 国境を越えるのには審査が必要となるが、そこはトーマスが協力してくれるという。
 トーマスは、魔道具の商いで有名な商人だ。彼ならば、他の人に知られず国境を越えるすべも心得ているだろう。
 その他にも、今後の連絡はどう取り合うかなどいくつかの事柄を決め、エリュシアは離宮へと引き上げたのだった。

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