奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 このまま誰を愛することもなく、愛されることもなく生きていく。それでいいと思っていたのに。
 ――エリュシアは、ディーデリックと出会ってしまった。
 彼と初めて顔を合わせたのは、嫁いでからひと月が過ぎようかという頃だった。

「……どちら様?」

 侍女を連れて、朝食後の散歩をしていたら、向こうから背の高い青年が歩いてくるのが見えた。
 皇帝の面影を持っていると言うことは、彼の弟――いや、彼の年齢を考えれば息子だろうか。
 十五歳のエリュシアより、五歳ほど年長に見える。彼は、離宮に人がいると思っていなかったらしく、足を止めた。
 背は高く、よく鍛えられているようだ。見事な金髪はきちんと整えられ、青く切れ長の目がこちらを驚いたように見ている。

「君……いや、あなたは?」
「エリュシアと申します。クラニウス王国から来ました」
「……あぁ」

 エリュシアの名を聞いた彼は、気の毒そうな表情になった。

「ディーデリックだ。よろしく頼む」
「皇太子殿下!」

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