奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 皇帝との対面の場で、顔を合わせる機会のなかった皇太子である。皇帝が四十近くなってから生まれた子ということもあり、エリュシアと年齢が近い。

「こんなところで、何を?」
「散歩です。殿下。ここは静かで……」

 静かというより寂しい暮らし。
 だが、正直なところを口にするわけにもいかなかった。視線を落としたエリュシアに、ディーデリックはますます気の毒そうな顔になった。

「話は、聞いている。父は――」

 だが、最後まで口にすることなく、彼は首を横に振る。
 ディーデリックは、皇帝とはあまり似ていなかった。
 皇帝は、側に近寄るのも恐ろしいといった雰囲気だったけれど、ディーデリックとならばもっと話をしたいと思わされる。

「エリュシア殿……どうか、心穏やかに過ごしてくれ」
「もちろんです、殿下」

 彼との初めての会話は、これで終わった。
 ほんのわずかな邂逅。彼との関係は、あっという間に終わってしまいそうな、そんな予感。
 だが、侍女以外の人との会話は、わずかなものであってもエリュシアの心を慰めてくれた。

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