奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 季節はだいぶ進んで夏を迎えようとしていた。これから、じりじりと照りつける夏が来るのだろう。
 与えられた離宮の生活は、王国のものとはまるで違っていた。だが、使用人達はよく躾けられており、エリュシアの生活にはなんの不便もない。
 訪れる人もいない静かな生活。気を紛らわせるために、庭園を歩いて季節の美しい花々を見つめる以外は、与えられた建物から出ることもなかった。

「側妃殿下。よかったら、ここに座っても?」
「え、ええ。どうぞ……お茶を用意してくれる?」

 エリュシアの向かい側に座ったディーデリックは、どことなく疲れた様子に見えた。
 エリュシアとは五歳ぐらいしか違わないはずなのに、それより十も二十も年を重ねた人のような疲弊感を感じさせると言えばいいのだろうか。
 年齢に見合った若々しさなんて、どこかえ消え失せてしまっているようだった。

「お口に合えばいいのですが……どうぞ」

 エリュシアが用意したのは、母国から持参した薬草茶である。もっとも、レシピは母から教わったものだから、もともと帝国に存在するものかもしれない。
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