奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 心を落ち着けてくれる効能があり、午後の時間にはこれを用意することが多い。

「……ホッとする香りだ」
「母が好んでいたものです……私も、好きです」

 帝国からクラニウス王国に入り、そのまま王宮に連れていかれた母。めったに訪れることのない父を待ちながら、母は何を考えていたのだろう。
 こうして母の国に来て、母が愛飲していた茶を飲みながら、そんな風に考えてしまう。

「……殿下は、何を考えているのですか?」

 不意にそう問いかけてしまったのは、深い意味があったわけではなかった。
 だが、恐ろしいほど年齢を感じさせない父を持ち、彼にすべてを支配されている宮殿で、この人は何を考えているのだろう。
 そう思っただけ。
 けれど、そんな考えが浮かんだら、ついうっかり問いかけてしまった。

「失礼いたしました」

 慌てて、謝罪の言葉を口にする。不躾すぎた。
ディーデリックの返答次第では、エリュシアの身にだって危険が迫るかもしれないのに。

「――それについては、また改めて話そう。今、するような話ではない」

 こうして、ディーデリックとエリュシアは、少しずつ少しずつ気持ちを寄せていった。

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