奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
「でも、今夜は来ないかも。もし来なかったら、欲しい人にあげちゃってくれる? なんだか、この辺りが痛くて」
「わかりました」

 胃のあたりを押さえて見せれば、マルタの言い草に胃が痛くなっているのだと勝手に解釈してくれたようだ。あっさりと騙されてくれてありがたい。
 帰り際、そっとマルタの部屋に立ち寄ってみる。扉を細く開いて耳をすますと、寝息が聞こえてきた。

(……今だわ)

 先ほど、酒に投入した睡眠薬――トーマスに入手してもらった――が効いているようだ。素早くマルタの部屋に忍び込み、ベッドの下に手を伸ばす。
 ここに、マルタが奪っていった母の宝石が隠されているのをちゃんと知っているのだ。箱の中身をすべて取り戻すと、そのまま自分の部屋へ。
 数が少ないのは、マルタが売ってしまったからだ。残っている分だけでも、取り戻せてよかった。
 テーブルの上に、昨日のうちに書いておいた手紙を置く。
 事前にトーマスから入手しておいた服に着替え、姿変えの魔道具をつける。最後に持ち出すべきものを詰めておいた小さな鞄を肩からかけ、今朝身に着けていた服はそのまま持って出た。
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