奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 機密保持を結び、外部に魔術回路の製作だけ依頼するという手もある。どこからか情報は漏れてしまうかもしれないが、今の性能は本体やそれ以外の部分の工夫でなりたっている。
 外部の者が真似をするのは、容易なことではない。
 まだ考え込んでいるトーマスをその場に残し、エリュシアは工房の外に出た。
 工房は大通りから少し離れた職人街の一画にある。エリュシアは商会の寮から通っているけれど、工房の奥や上階に生活空間をもうけている者も多い。
 子供達は工房の周囲で気ままに遊び、大人達は仕事の合間に立ち話をしている。
 ぐるりと見まわせば、低い屋根が連なる向こう側に皇宮が見えた。白く高い建物は、皇都の中で一番目立つ建物だ。
 東西南北に、周囲を見張るための高い塔がある。周囲を見張るためだけではなく、高貴な囚人の収監場所であるとも一度目の人生で聞かされた。
 エリュシアは、離宮に押し込められていてあの塔に立ち入る機会はなかったけれど、それを聞かされた時にはぞっとしたものだ。
 いつか、自分もあの中に押し込められてしまうのではないかという気がして。
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