奪われる人生なら、 すべて捨ててしまいましょう ~忘れ去られた第七王女による国を巻き込んだ逆転劇~
 では、とディーデリックに頭を下げておいて、トーマスは職人達を呼び集め、工房の奥にいくつかある部屋のうち、一番手前の部屋に姿を消す。
 魔術回路を外注するかどうか、話し合うのかもしれない。

「では……」

 エリュシアが彼を案内した奥の部屋は、商談に使われる場所だった。
 出来上がった製品は、別にもうけている店舗の方で売買するか直接取引先まで届けるのだが、工房にも話をする場所が必要だとトーマスが用意したものだ。
 たとえば、貴族お抱えの彫刻家から、髪乾燥器の加工前の本体だけを譲ってほしい――装飾は彫刻家が行う――なんて依頼があった時に、使う場所だ。
 それなりに上質なソファが低めのテーブルを挟むように置かれている。設計図等を広げて話をすることもあるため、テーブルはかなり大きかった。

(……以前とは、少し変わったかしら?)

 ディーデリックの雰囲気が、以前とは大きく変わっている気がする。
 以前も懸命な人ではあったけれど、今回の人生ではそこにさらなる覚悟が加わったような。
 ディーデリックは、エリュシアと向かい合う位置に腰を下ろすと、組み合わせた両手を膝の上に置いた。
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